副業の収入金額が300万円を超えない場合は「雑所得」になると話題になっていた所得税基本通達改正案について、内容の修正が行われました。
事業所得の場合には、青色申告の特典や、損失を他の所得と相殺できるなど税金計算上有利になるため、一律に収入金額で判断されて雑所得にされてしまうと税負担が大きくなるということで反対意見が殺到していました。
修正後は、収入金額が 300 万円以下であっても、帳簿書類の保存があれば、概ね事業所得に区分されることとなります。ただし、帳簿の保存があっても、①収入金額が僅少と認められる場合(300万円以下で主たる収入の10%に満たない場合)や、②営利性が認められない場合(例年赤字で、解消するための取組をしていない場合)には事業所得とは認められませんのでご注意ください。
所得税基本通達の修正の解説(事業所得と雑所得の範囲)
改正案の修正の結果、「社会通念上事業と称するに至る程度で行っている」場合には事業所得、そうでない場合には雑所得という基本的な考え方自体はこれまでと変わりませんが、今回の改正で一定の目安が設けられた形です。
今後は、収入金額が 300 万円以下であっても、帳簿書類の保存があれば、概ね事業所得に区分されることとなります。
ただし、以下の①もしくは②に該当する場合には、事業と認められるかどうかは個別に判断することになるためご注意ください。
①その所得の収入金額が僅少と認められる場合
その所得の収入金額が、例年(概ね3年程度)、300 万円以下で主たる収入に対する割合が 10%未満の場合
②その所得を得る活動に営利性が認められない場合
その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合
単に帳簿書類の保存があれば事業所得として認められるわけではなく、①収入金額が僅少と認められる場合や、②営利性が認められない場合には事業所得とは認められません。
参考
【国税庁】「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)
「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募の結果について
【所得税基本通達改正後から抜粋】
(業務に係る雑所得の例示)
35-2 次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。
⑴~⑹ 省 略
⑺ 営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得
⑻ 省 略
(注)事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実
がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。
【雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説から抜粋】
事業所得と業務に係る雑所得の区分については、上記の判例に基づき、社会通念で判定することが原則ですが、その所得に係る取引を帳簿書類に記録し、かつ、記録した帳簿書類を保存している場合には、その所得を得る活動について、一般的に、営利性、継続性、企画遂行性を有し、社会通念での判定において、事業所得に区分される場合が多いと考えられます。
(注)その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存している場合であっても、次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断することとなります。
① その所得の収入金額が僅少と認められる場合
例えば、その所得の収入金額が、例年、300 万円以下で主たる収入に対する割合が 10%未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当すると考えられます。
※「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます。
② その所得を得る活動に営利性が認められない場合
その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます
※「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。
他方で、その所得に係る取引を帳簿に記録していない場合や記録していても保存していない場合には、一般的に、営利性、継続性、企画遂行性を有しているとは認め難く、また、事業所得者に義務付けられた記帳や帳簿書類の保存が行われていない点を考慮すると、社会通念での判定において、原則として、事業所得に区分されないものと考えられます。
ただし、その所得を得るための活動が、収入金額 300 万円を超えるような規模で行っている場合には、帳簿書類の保存がない事実のみで、所得区分を判定せず、事業所得と認められる事実がある場合には、事業所得と取り扱うこととしています。